線香の匂いと夏休みの田舎の思い出

好きなもの

五感のうち記憶や思い出が一番蘇るのは、個人的には嗅覚だと思う。

世の中には季節・時間・場所等によって色々な匂いがある。それらによって

いい思い出はもちろん懐かしい記憶や嫌な出来事などが瞬時に頭に浮かんでくる

ことがある。

 

自分は線香の匂いが好きで心が落ち着き癒される。というのも線香の匂いを

嗅ぐと子供の頃の長期休みの事、特によく帰っていた父の実家がある田舎での

夏休みの生活を鮮明に思い出すからだ。

小学生の頃は夏休みになるとほぼ毎年父方の実家に帰っていたのだが、いつも

暮らしている自宅には無い仏壇があり帰ると必ずすぐにご先祖様に手を合わせる。

その時線香に火をつける係りになる。そして毎日朝・昼・晩にご飯とお茶を

お供えするのだがその時も線香に火をつける。そして自宅に戻る時も最後に

仏壇に手を合わせる。

線香はお参りをしたらすぐに消すのだがその匂いは何十年と家の中を漂って

いたので家に染み付いていて滞在中常にそれを感じながら生活をしていた。

線香の匂いがあることが当たり前だった。そしてそこで過ごす日常はなぜか

落ち着いた気持ちになった。

田舎での一日は朝のラジオ体操から始まり午前中の宿題・勉強タイム、昼食後の

昼寝の時間、夕方の自由時間と何の変哲もないものだったがただただ楽しく

過ごしていた。今になってみると線香の匂いの中で過ごしたその自由気ままな

生活と感受性豊かな子供の心で感じた日々の出来事に対する思いが懐かしく蘇り、

そしてもうあの頃には戻れないという現実がとても切ない気持ちにさせる。

 

もう一つ、蚊取り線香の匂いも同じである。父の実家は蚊取り線香をとても

よく使っていた。家の土間や縁側で使うのはもちろん庭の草刈りや家庭菜園の

トマトやきゅうりを取る時等に腰にぶら下げていたものだ。今ではリキッド

タイプやマットタイプ等様々な蚊取り器があるが自分は蚊取り線香が一番好きだ。

とはいえ匂いが服やカーテンなどに付くので家の中ではさすがに使わないが

玄関先で使っているので夏になると懐かしい気持ちになる。

 

父方の実家は20年ほど前に誰も住まなくなり数年前更地にして売りに出したので

今はもうない。でも線香の匂いを嗅ぐと古き良き子供時代を過ごせたなと嬉しく

そして誇らしい気持ちになる今日この頃なのである。

 

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